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<愛の不時着> ※ネタバレあり
環境によって作られた3人の男

愛の不時着に出てくるキャラを見ていると、生い立ちが非常に人格形成へと及ぼす影響が大きいことを痛感させられます。
その分かりやすい代表とも言えるのが、対極にいる主役であるジョンヒョクと悪役のチョルガンです。
そしてスンジュンですね。

チョ・チョルガンという巨悪が生まれた背景

愛の不時着では、一貫して最後まで悪役でい続けたチョ・チョルガン。
(物語上での一番の悪は、セリの二番目の兄の嫁だとは思いますけどね。どこまで考察してみても情状酌量の余地もない。)

チョルガンがあそこまでジョンヒョクを追い詰めた理由

チョルガンが最後までリ家の壊滅に執着し、どこまでもジョンヒョクを追い詰めて、地獄の底まで突き落とそうとするあの執念は理解できないものです。
軍事部長とタッグを組み、リ家を破滅させる協力をし、配慮星や、セヒョンからお金を巻き上げる為という単純な理由だけではない。
なんで、そこまで?と。
自分の悪事を暴かれ、全てが終わることを恐れる為だけにする範疇を超えてます。

けれど彼がもともと浮浪児だったことの生い立ちから、あんな風にねじれてしまったんだと想像してみると、見方も多少は違ってきます。

実は重要 浮浪児の兄妹のシーン

ドラマには、短いシーンではあるものの印象的な浮浪児の兄妹がでてきます。
お兄ちゃんはジョンヒョクの家に盗みに入り中隊員たちに捕まってしまいますが、病気の妹にご飯を食べさせてやりたかったからだと必死に謝り訴えます。
その姿を見たセリは家にある食べ物などをあげようとしますが、
「あんなものはごまんといる。嘘をついて同情をかおうとしてるだけだ!」
と止める隊員の言葉を無視して兄に優しく接するセリ。
そしてセリの好きなようにさせてあげるジョンヒョク。
ドラマを最初に観た時は、単にセリとジョンヒョクがお互いにいい人であるということに気づくという演出の為だと思っていました。

また、物語後半に追われて誰も助けてくれない絶体絶命のピンチのスンジュンを助けてかばったのもあのお兄ちゃんですね。
脅されて協力させられた訳でもなく、自ら進んで困っているスンジュンを助けてあげてる。
それは、見返りを求めたものではなく、優しくされたことがあるからこそできた行動なのではないか、と勝手に妄想しほっこりします。
匿ってくれたお礼と言いながらも、彼らを助けてあげたいという苦しかった自分の子供時代と重ね合わせて、うまく使えと言い100ドル紙幣の束を渡します。
セリに優しくされただけで人の手助けをできるほどなので、彼の今後の将来が楽しみでなりません。

浮浪児の兄妹のシーンから読み取れること

実はチョルガンの子供時代の立場・土台はこの子たちと同じ。
自分を庇ってくれる親もいなく、優しく愛情を受けたこともなく、あっちへ行け!と誰も助けてくれないどころか酷い扱いを受けてきた人生だったと容易に想像できます。
本当のことを言っても誰も信じてくれないので、何も信じない。
誰も助けてくれず、生きてくためには・身分が低い自分が認められる為には・のし上がっていくには・と簡単には想像できない程の壮絶な努力をしてきたはずです。
努力、というのはちょっと綺麗すぎて違うかもだけど。
その中で、見返りがあれば人の態度が変わることを学習し、
執念というか、怨念というか、モンスターになっちゃった訳ですよね。
誰か、やさしくしてくれる人に出逢っていれば、セリやジョンヒョク・スンジュンのような存在に会えて少しでも優しさに触れていればという思いが頭をよぎります。
直接的には描かないものの浮浪児たちを描くことで、チョルガンが形成された背景がみえるようにしたのではないかなと推測してしまう。
そう考えると、多少は(多少ですけど)同情する一面もあったりはしますね。

自分とは違う土台のジョンヒョクへの嫉妬・憎しみ

にしてもチョルガンは、尋常じゃない憎しみをリ家に持ってますよね。
ジョンヒョクの兄ムヒョクとは親友だったはずなのに、自分の不正を暴こうとしたムヒョクを殺す。
更に、兄の死の真相を調べ続け、兄と同じように自分の悪事を見逃さない融通が効かない頑固なジョンヒョク。
邪魔をするな!という思いだったはずなのに、ジョンヒョクの身元がわかった途端に様子が一変。
潰してやる!追い詰めてやる!の根底にある恨みがメラメラと火に油を注いだ感。
チョルガンからしたら、ぬくぬくお坊ちゃんで、生まれがいいだけで特別扱い。
容姿にも恵まれて、誠実な人柄も相まってみんなから愛される存在。
チョルガンから見れば、ピアノを呑気にひいて、留学までしてるジョンヒョクの存在は許せる存在じゃなくにっくき潰したい地獄をみせてやりたい相手なのです。
逆恨みにも程があるけど。

ジョンヒョクという完璧な人間の作り方

恵まれている環境が前提にある

ジョンヒョクが兄の死によって心を閉ざしてしまったとはいえ、あれだけ優しい正義感に溢れた男に育ったのは、愛情たっぷりに育てられたからだと思います。
財力のある家庭で、好きなことができる環境で、優しいお母さんとお兄さんに大事に大切にされてきたから。
チョルガンが誰からもしてもらえなかった事が当たり前にある環境だったジョンヒョク。
単に甘やかされてわがまま放題に育った訳ではなくて、ちゃんと育てられたんだなぁ・・というのがわかる。
留学もしてるからちゃんと外の世界の事も知ってる。
ゲームに熱中した際に言ってた、僕は多方面に類稀な才能がありすぐに要領が掴めると自己弁護もしてたけど、負けず嫌いなジョンヒョクは努力も決して怠らない。
だからなんでもできちゃう。

夢は諦めることになったけれど・・

お兄さんが亡くなったことで、家を継がなくてはならなくなり、夢を諦めて、軍人になった。
それを契機に心まで閉ざして淡々と生きている。。。
というジョンヒョクに、みんな同情する展開でしたが、北の中ではやっぱりキラキラ王子様。
チョルガンにしてみれば、全然同情なんてしないだろうし、ただただ地獄に突き落としても取るに足らないくらいに憎くて憎くて最後の最後まで呪いをかけるほどに苦しめたい存在なんだと思います。

悪を指南したり援助するのが1番のワル

賄賂が通じるちっちゃい世界

チョルガンは、違法に金儲けをして、高官に賄賂を送りまくり、這い上がっていくしたたかな人物です。
ちゃんとバレた時の為に、それが相手の弱みになるように証拠も残し、自分の悪事がバレても華麗に乗り越えていきます。

どこまでもくそな高官たち。
北では恵まれてるにも関わらず、単に贅沢したいがための賄賂を受け取り便宜を図る。
けど、ダンのおじさんが言うように
「僕は、姉さんの財力があったから悪事に手を染めなくてもよかった」というように、どれだけの高官であっても、やっぱり恵まれた報酬はないということか、なんかやるせない。。。

お金を出して意のままにする奴が一番悪い!

にしても、援助交際と同じで、お金を出す人がいることこそが元凶です。
お金をもらう人も悪いけど、お金を払う人がいなければそもそもそんなことできないのだから。
お金を払って対価をもらってるだけと悪びれもせず、金でなんでも解決できると思ってるし、そうできていることが本当に腹正しいしもどかしい。

殺し屋に殺人依頼をした依頼人と実際に殺人を犯す殺人犯。
どっちが悪いか?って私の主観で言えば確実に依頼主である首謀者です。
自分の手を汚さないんだから余計にタチが悪い。
目的を達成する為なら手段を選ばずお金で全てを解決するのだから。

北の人たちの思想教育も怖いけど、
けど基本的にはアナログで純粋な人たち。
それが資本主義の金の力を使って利用している韓国や中国など様々な欲深い連中によって蝕まれてしまっている。
もう理想郷とかとかけ離れちゃってるわけですよね。
目的のためなら手段を選ばず、とんでもない国ではあるものの、単に資本主義の国になれば幸せになるとも思えない・・
金儲けしても幸せにはなれないよ、と警告をしてるようにも感じる。
経済制裁しても、実際に影響を受けるのは一般の国民です。
上の人々は痛くも痒くもない。援助物資も上が独り占め。
軍事費どれだけ使ってるんだろう・・
ミサイル一個でどれだけの人が救われるんだろうか・・

ク・スンジュンの複雑な立場

ストーリーが進んでいくに従って、彼の生い立ちも明かされていきます。
あのくそバカな2番目のセリの兄貴からならどれだけお金を踏んだくってもいいよ、と思いながらも犯罪は犯罪。
けれど、それはユン家に対する復讐でした。
そもそも、彼は経営者の息子であったので育ちはよかったはずです。
けれども、ユンセリの父の強引な買収によって全てを失ってしまった。
一家離散にもなり、誰にも頼ることなく孤独で生きてきた。
浮浪児のお兄ちゃんに自分を重ねるあたり、同じような境遇にまでなったことがわかります。
だけど、人の良さは隠せない。優しい気遣いを意に介さなくてもしちゃう。
いくらアホなお兄ちゃん相手とはいえ、巨額詐欺をいとも簡単にしてしまうのは頭の回転も早く賢い人物。
口も達者だし、甘え上手でコミュニケーション能力は相当に高い。
どこまでも、ワルになりきれず、ついつい助けちゃう。
そしてそんな彼の良さに気づいた人たちも、スンジュンを助けてしまう。
そんな憎めない愛すべき存在のスンジュンも、優しさを受けたことがあるからではないだろうか?
優しさを一回でも知ったことがある人とない人の違いが出ている気がする。

性善説と性悪説

性善説とは、
人間は生まれたままの状態は善い人で、外から悪影響を受けることで悪いことをするようになるという考え。

性悪説とは、
人はもともと利己的な本性を持っている。人間は生まれた時から悪で、教育や学習で善い人になれるというもの。

今までは、性善説だと私も思ってきましたが、最近は まぁ でもどっちも同じことを言ってるんだなぁと思う。
悪い人が周りにいれば悪くなるし、いい人が周りにいれば良くなる。
いい人が周りにいなければ悪いままだし、悪い人が周りにいなければ悪くならない。

ただ、どっちもいない場合はどうなるんだろう?と。
どっちにもなるよね、と。
疑う事を知らない純粋無垢か、本能のままの野生児か。

社会で生きていく上では、どちらにでもなりうるという事ですよね。